ヨノギ式~幸せになるゾウ

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ロシアの作曲家、ショスタコーヴィチは頭の中に弾丸の破片があったか?

オリヴァー・サックスの「火星の人類学者」という本でこんな話があった。

ショスタコーヴィチは頭の中に弾丸の破片があって、頭を傾けると音楽が聴こえてくる。

そしてこの現象を作曲に利用したとか。

なのでショスタコーヴィチはその金属を頭から取り除く手術を断り続けたそうだ。

「妻を帽子とまちがえた男」~人間の脳とは不思議である - ヨノギ式~幸せになるゾウ

この話は本当なのであろうか?

日本語で検索しても何も情報が出てこないので、英語で調べてみた。

「Shostakovich brain metal」をグーグルで検索。

どうやら1983年7月10日のニューヨークタイムズにこの記事が載っていたようだ。

MUSIC VIEW; Did Shostakovich Have a Secret? - The New York Times

この記事によるとショスタコーヴィチは人生最後の34年間、脳に金属が入ったまま。

1950年代に中国のワン医師がロシアにいる時にショスタコーヴィチを診た。

この時にレントゲンで金属の破片が左側頭葉にあるのを確認。

 

さて、この話は詳しい記録が残っていないので本当かどうか怪しい。

そもそもショスタコーヴィチは頭を怪我したのだろうか?怪我をしたとして、国家の威信にかけてソビエト連邦が隠した?

そしてワン医師はなぜ30年も後になってからこの話を公表したのだろうか?

これも「モーツァルト、サリエリに暗殺された説」や「チャイコフスキー自殺説」などクラシック音楽にまつわる噂話の1つにすぎないのかもしれない。

 

この時期のソビエト連邦は強烈で、社会主義らしい音楽を作曲しなければ死刑になってしまう恐ろしい時代。

作曲家のラフマニノフやストラヴィンスキーはアメリカに引っ越していたりする。

ショスタコーヴィチはソビエトから動かずに「自らが求める音楽と体制が求める音楽との乖離に葛藤した、悲劇の作曲家」として有名。

国家権力に翻弄された一人の男としての人生も興味深い。