学校で習う歴史はほとんどが出来事の暗記で面白くない。だから記憶にも残らない。
この「帳簿の世界史 (文春文庫 S 22-1)」は会計や簿記からの視点で歴史を説明してくれているのが面白い本。
学校で習った歴史とはまた違った物事を発見するかも。
印象に残ったのは
第3章の莫大な財産があったイタリアのメディチ家が、後の世代が会計をしっかりと行わなかったのですぐに没落してしまった話。
第8章、陶磁器ブランドで有名なウェッジウッドの話。創始者のジョサイア・ウェッジウッド(1730~95)は経営に確率の概念を取り込み、緻密な原価計算を行うことで会社を繁栄させた。
ちなみに「進化論」のダーウィンはその孫。
第9章、フランス革命の原因は会計が原因!?透明化された国家予算によって民衆はマリー・アントワネットのダイヤの首飾りが約30憶円だと知ることができて怒りに火が付いた。
第13章の「大恐慌とリーマン・ショックはなぜ防げなかったのか」は現代の話なので実感が伴うね。
複雑化した会計は、もはや専門教育を受けた人でなければ扱えない。
その中で大手会計事務所は、監査で知り得た財務情報をもとにコンサルティング業を開始する。明らかな構造的矛盾。
有名なのは「エンロン」という会社。最近とても気に入ってる動画シリーズでの説明が役に立つ。
この動画シリーズを見ていると、だいたい破産した会社は帳簿の操作をして利益をごまかしているようだ。
中世のイタリアでも秘密の裏帳簿が当たり前のようだったのでもしかしたらほとんどの会社がやっているのでは!?と考えてしまう。
日本の国家予算にも特別会計という訳のわからない帳簿があるしね。帳簿でズルをするのは避けられない運命なのであろうか?
サミュエル・ジョンソンの「ロンドン」(1938)という詩にもこう書いてある。
「秘密の策略を狡猾に練り
スキをうかがい、抜け道を探し、
まんまと信用を手にする
支配するも裏切るも思いのまま
うさんくさい数字には監査もなく、
そんな罪も安全至極、ただ憎むべきは貧困なり。」
倫理的に正しい資本主義とは成立できるのであろうか?
日本でもちゃんとした国家予算を公開したら、とんでもない内容が発覚してみんなが怒りに燃えて革命が起きたりして。
ちょっとした希望は「会計が文化の中に取り込まれていた社会は繁栄する」こと。
日本でも中学校で「簿記」を必修科目にすれば今よりは繁栄するかもね。
簿記3級ぐらいの知識なら、一般常識にしても良いと思う。