チェロだけで演奏される曲も珍しいのでは?
さらにその中でも有名な曲となると、これしかない。
バッハは当時は作曲家としてよりも、演奏家として有名であった。なので無くなってしまった楽譜がたくさんあるそうだ。
中には肉屋で肉を包むための紙に、バッハの楽譜が使われてしまったとか…。
この「無伴奏チェロ組曲」も長い間、眠っていた曲の1つ。
バッハが亡くなってから140年後の1890年、スペインのバルセロナで13歳の少年が奇跡的に古本屋でこの楽譜と出会う。
ベートーヴェンの楽譜の隣で埃をかぶっていて、何気なく手に取ってホコリを払って見ると、標題は「無伴奏チェロ組曲」と書いてあった。
この少年の名前は「パブロ・カザルス」。のちに偉大なチェロ演奏家となる人物である。
「そんな曲があるとは知らなかったが、見た瞬間にとてつもないものを見つけたと直感した」と後年、パブロ・カザルスは語っている。
楽譜を発見してから14年後の1904年、27歳になったカザルスはパリにて無伴奏チェロ組曲の全曲公開演奏会を開催。幻と思われていたバッハの名曲が史上初めてその全貌を現した。
そして時は流れ、録音やレコード技術が発達する。
約30年後の1936~39年、この曲は録音された。
このバッハの「無伴奏チェロ組曲第1番」の前奏曲、映画やテレビでも流れることがあるので聞いたことがあるかもしれない。
しかしパブロ・カザルスが古本屋でこの楽譜を見つけていなければ、今でも無伴奏チェロ組曲は幻のままだった可能性。
楽譜と演奏家の奇跡的な出会いに感謝しよう。ありがとう。