「ベートーヴェンを超える交響曲を作曲せねば」。
これがブラームスがかかえていたプレッシャーであることは間違いない。
この交響曲が完成するまでにかかった時間。
なんと21年。
その時、ブラームスはすでに43歳であった。
ベートーヴェンの死後6年目である1833年にブラームスは生まれた。22歳の時から、偉大な作曲家を意識しつつ書かれた曲がこれである。
ティンパニの力強いリズム上で、体も心も張り裂けそうなパッセージで始まる。
この始まり方だけでも、完成度の高さがうかがえる。
そして最後には、ふもとから見上げていた巨大な山脈が突然目の前にその雄大な姿を現す。
まるでベートーヴェンという今まで見上げることしかできなかった巨大な壁の向こう側を、とうとう見ることができたように。
雄大でしかもスキがない。「作曲に21年もかかった」という事実を知らなくても、この曲の完成度の高さは感じずにはいられないだろう。
はたして、ブラームスはベートーヴェンというプレッシャーから解放されたのであろうか?