「フランクリン自伝 (岩波文庫)」でおまけのようについてる作品。
周りの人と比べるとお金を持ってそうなオジ様が「どうすればお金持ちになれるのか?」と聞かれて、その秘訣を語るという設定。
フランクリンが作った「貧しきリチャードの暦」というカレンダーのようなものからの引用が多くある。
前半は「一生懸命、働いて収入を上げろ」との教訓。暦に書かれている文章だからか、「時間を大切に」との教訓も強調されている。
- 人生を大切に思うと言われるのか。それならば、時間をむだ使いなさらぬがよろしい。時間こそ、人生を形作る材料なのだから
- 眠っている狐には、鶏は一羽もつかまらぬ
- 寝たいなら、墓場に入ってからで少しもおそくはない
- 時間の浪費こそ、一番の贅沢
- 時間の失せ物は、間違っても見つかることなし
- いつもきまって時間の不足におわる
- ものぐさは万事を難くし、勤勉は万事を容易にす
- 朝寝する者、一日じゅう駆け足、夜になっても仕事に追いつかぬ
- 怠け者の足ののろきよ、貧乏がすぐに追いつく
- 仕事を追い立てよ、仕事に追い立てられるな
- 早寝早起き、健康のもと、財産を殖やし、知恵を増す
- 働き者の家には、飢えがのぞきこむことはあっても、あえて入り込むことはけっしてない
- 勤勉は借金を支払い、自業自得は借金を殖やす
- 勤勉は好運の母
- 怠け者が寝ている間に深く耕せ、売ったその上に、手もとにおく余分の取り入れが得られよう
- 今日の一日は明日の二日に値す
- 明日なすべき事あらば、今日のうちにせよ
- 怠けているところを自分自身に見つけられるのを恥じよ
- 小さな一撃でも、たび重なれば、大木をも倒す
- 暇がほしくば、時間を上手に使って作れ
- 一分という時間さえ容易に得られぬ以上、一時間もの時間をむだに使うな
- 閑暇の生活と怠惰の生活とは、まったくの別物
- 忠実で、しかも自分の気に入るような召使いがほしくば、自ら自身の召使いになれ
- わずかな怠りでも、大きな災いを招きかねない
- 釘が一本ぬけて蹄鉄がとれ、蹄鉄がとれて馬が倒れ、馬が倒れて乗っていた者が命を落とした
現代の日本では多くの人が頑張って仕事をしているのにお金持ちにはなれない。と言うか働いても生活するのが精一杯。
参考にするべきは後半の節約する心構えか。
- 稼ぐだけでなく、残ることを考えよ。西インドを手に入れながら、スペインはついに富める国になれずにおわった。入ることよりも、出るほうが多かったから
- 財産痩せて、欲だけつのる
- 道楽一つの金で、子供二人が育つ
- わずかな出銭に気をつけよ。小さな漏れ口が大きな船を沈める
- 美食家の末は乞食
- 買う必要もないものを買ったら最後、やがてそのうちに、なくてはならぬものまで売り払わねばならぬことになる。
- 金を出して後悔を買う愚か者
- 金を借りに行く者は、悲しみを借りに行く
- 道楽心と相談する前に懐と相談せよ
- 最初のほしい気持を抑えるほうが、あとから次々に起こってくるほしい気持を全部満足させるよりも易しい
- 借金は嘘の始まり
- 貸し主は、借り主よりも物覚えがいい
- 借り手は貸し主の奴隷、債権者は債務者の主人
- できるあいだに老後と不時にそなえよ、朝日は一日じゅう照っているわけでなし
- 明日、借金を背負って起きるより、今夜の食事を抜きにして床につけ
この話の舞台は競売所のようなのだが、競売が始まると話を聞いていた人々がみんな「お金持ちになる教訓」の話を忘れたように競売所になだれ込む、というオチ。
人間やはり目の前の欲望に打ち勝つのは難しい。欲望に打ち勝てる人間ならば、豊かになれる可能性がある。
現代でも通じる気に入った教訓は
- 商売を持つ者は財産を持つ
- 人を使っていながら監督を怠るのは、財布の口を開けたままその前においておくようなもの
- 賢い者は他人の災いで悟り、愚かな者は自らの災いによっても目がさめぬ
- 本当の貧乏人一人にたいして、贅沢な貧乏人が百人
時代を超える名言は素晴らしい。
「貧しきリチャードの暦」の表紙の写真。
英語だけどこちらに全文が書いてある。