脳神経科医であるオリバー・サックスが書いた本。7人の患者が登場するが、どのケースも興味深い。
1.色盲の画家
ちょっとした交通事故で頭を打ってしまった画家。しかしその日から色がわからなくなってしまった。
目に見える全ての物から色彩が消えてしまい、世界は白黒に。画家なので、事故の前は色について感受性も知識も豊富だったのだが。。。
興味深いのは色の記憶もなくなってしまったこと。目をつぶっても色が思い出せないという。
考えてみると「色」とは何なのだろう?犬は色が見えないそうだし。そうなると「色」というのは存在するのであろうか?
私たちが現実だと思っているものは感覚器官と脳が作り出した幻想なのかもしれない。
2.最後のヒッピー
新しいことが記憶できなくなった男性。記憶ができなくなって20年、まるで時が止まっているかのようだ。
自分の父親が亡くなった時も「50歳を越えていたかな」と言ったが、父親はもう70歳を越えていた。自分の父親が「70歳以上だった」との話を聞いてショックを受けるが、その話もすぐに記憶から消えてしまう。
目も見えなくなってしまうのだが、自分の目が見えなくなっていること自体にも気が付かない。
3.トゥレット症候群の外科医
トゥレット症候群は、わめいたり、奇妙な動作をしたり、無意識に汚い言葉を口にしてしまう症状。
しかしこの外科医、手術中はこの症状がまるで消えてしまう。セスナ機も操縦できる。
4.「見えて」いても「見えない」
幼少のころに盲目になってしまったが、50代になってから手術を受けて視力が回復した男性の話。
しかし目が見えるだけではどうも十分ではないらしい。見えた物を認識する脳の機能が必要なようだ。
生まれてからずっと見えてる人にはわからないが、途中から目が見えるようになると脳に負担がかかり「見える世界」が相当なストレスになる。
5.夢の風景
幼少のころに住んでいた村の絵をひたすら描き続ける画家。幻覚のように村の風景が思い浮かび、描かずにはいられなくなる。
会話の内容もその村のことばかりになってしまい、友達が離れていってしまう。
6.神童たち
見た物を記憶して、絵に描くことができる子供たち。この特別な才能を活かして、社会的に成功できるの子はわずからしい。ほとんどの子は一度も認められず、病院の奥に埋もれている。
やはり成功するには才能や技術だけでは十分ではない。
7.火星の人類学者
人間の規範、合図、行動様式を理解するのは難しいのだが、動物の気分やしぐさなら直観的にわかる女性。動物学の博士号も取得していて、牧畜場の設計などもする。
著者のオリヴァー・サックスが原作の映画で「レナードの朝」がある。こちらの内容も面白いし、患者役のロバート・デ・ニーロの演技が素晴らしいので見る価値あり。
医者役のロビン・ウィリアムズもいいね。
機会があれば映画の原作である本も読んでみよう。
オリヴァー・サックスの本はかなり楽しめたので「妻を帽子とまちがえた男」も読んでみようと思う。