ワイの大好きな本、「ブラック・スワン~不確実性とリスクの本質」「まぐれ~投資家はなぜ、運を実力と勘違いするのか」などの著者であるタレブ氏の師匠ような存在である経済学者のマンデルブロ氏による本。
この本を読んだからといって、相場で大儲けできるわけではない。
けれど致命的なミスを防ぐことはできるようになるかもしれない。
「フラクタル」の考え方をベースにしながら、金融工学の批判、ナイル川などの自然の研究が金融市場でも役立つ、などの話がある。
興味があるけど時間がない人は12章の「禁断の金融10ヵ条」だけでも読んでみよう!
- 市場とは乱高下するものである
- 市場とは、極めてリスクが高いものである~既存の金融理論では決して起こるはずのないリスクが現実には起こる
- 市場のタイミングは極めて重要である。巨額の利益と損失は短期間に集中して起こる
- 価格はしばしば不連続にジャンプする。そしてそれがリスクを高くする
- 市場での時間は、人によって進み方が違う
- いつでもどこでも市場は同じように振る舞う
- 市場は本来、不確実であり、バブルは避けることができない
- 市場は人をだます
- 価格の予想は無理と思え。しかしボラティリティなら予測可能だ
- 市場における価値は、限定された価値である
<内容紹介文>
「フラクタル」という言葉、あるいは本書の著者である「マンデルブロ」については、どこかで聞き覚えがあると思います。
フラクタルとは、全体を一定の割合で縮小すると部分が再現できることを指します(部分と全体の自己相似)。
1970年代にマンデルブロにより命名され体系化された概念です(本書167頁)。
自然現象との幅広い関わりが研究され、統計物理学、宇宙論、気象学、水文学、地形学、解剖学、分類学、神経学、言語学、情報技術、コンピュータグラフィックスなどの分野にさまざまな影響を及ぼしています。
インターネットで「フラクタル」あるいは「マンデルブロ集合」を検索していただければ、どこかで見たような図を多数見ることができます。
雲や山脈などの風景を描いた、「写真」のような図もありますが、コンピュータが計算して描いたグラフィックスです(本書196、324頁)。
マンデルブロ以前には、自然の世界において「雲は丸くないし、山は円錐ではないし、海岸線は滑らかではない」ことを数学的に説明することは不可能でした。
それを明らかにしたのが、1982年に刊行された『フラクタル幾何学』(翻訳は1985年)です。
その功績は「私たちが自然を見る目を変えてくれた」と称えられ、1993年には物理学の世界で権威あるウォルフ賞を受賞しています。
また2003年には日本国際賞を受賞しています。
本書は、その考え方を金融市場に応用したものです。
マンデルブロにとっては、1960年代から続けてきた研究ですが、一般書の形で発表されるのは本書が初めてです。
マンデルブロの研究は、所得の分布と綿花価格の変位の分布、乱流状態にある流体エネルギー散逸量の変動と金融市場におけるボラティリティの変動の類似性など、グラフを見比べて「似ている」と感じた直感に基づいて研究が発展したそうです。
本書では、「自然現象のフラクタルと経済現象のフラクタル」は同一のものであり、このフラクタル幾何学を金融市場に適用することによって「ランダムウォーク理論からは予想できないバブルの発生と崩壊」が理解できるようになるというマンデルブロの考え方が示されています。
金融工学の基礎となっているのは、コインを投げて、表が出たら相場が上がり、裏が出たら下がるという最も単純な「マイルド型」のランダムさの変動をモデル化した概念です。
しかし実際の市場は理不尽な動きをする「ワイルド型」のランダムさに基づいて動いています。
市場の動きを説明しモデル化できるのは、「洪水」や「大気の乱流(タービュランス)」などを説明できる「マルチフラクタル・モデル」であるとマンデルブロは主張します。
2008年1月のダボス会議でライス国務長官は、サブプライムに揺れる世界経済について「われわれは今、タービュランス(乱気流)のなかにいる」と発言し、話題になりました。
「タービュランス」の金融市場を理解するためにも、本書をご一読ください。